「まねきTV」抗告審の寸感

対NHKの決定文を一読した印象を簡単に…*1

  • 本件システム(≒番組送信システムとその装置)のポイントはとりあえず以下3点。
    • 1台の装置で「1対1」の送信が行われる*2
    • 利用者各自が1台の装置を所有し、各自のパソコン等に送信している*3
    • どの番組を送信するかは利用者が選択している*4
  • 例えば、アメリカに単身赴任中のお父さんがいたとして*5、日本にいる奥さんに番組の録画を頼んだ、ということを考えてみる。んでもって、その録画ビデオとかDVDを郵送してもらって、お父さんはアメリカの自宅でこれを視聴するという状況があったとする。本件のシステムがやっていることは、この状況と本質的には変わらないよ、ということなんだろう。
  • もうちょっと正確に言えば*6(極端な例だが)、家のアンテナからテレビまでのケーブルの長さは、(普通であれば、)せいぜい10〜20mくらいだと思うが、これを「アンテナは日本に置いて、テレビはアメリカの自宅に置く」ということを考えてみる。んでもって、太平洋を跨ぐような長さのケーブルを敷設して、テレビとアンテナを接続し、日本の番組をアメリカの自宅で視聴する、と。本件はこれと同じということらしい*7
  • いずれにせよ「1対1」であって「1対多」ではないし、まねきTVの業者さん(=被抗告人)はユーザーの行為にはノータッチ(=ユーザー・イニシアティヴ)ですよ、ということが強調されている印象。
  • もっとも、本件は、①:仮処分の事案であるということ*8、②:著作隣接権の事案であるということ、の2点は注意が必要だと思われる。特に②の点は、抗告においてNHKが「著作権者」としての申立を追加したにも拘わらず*9、裁判所は「著作権」と「著作隣接権」では審理対象が異なることを理由に(実質的な判断をすることなく、)申立追加を不適法却下している。本案でひっくり返るとしたら、「著作権」の点からかもしれない。*10

〔以上〕
 

*1:他のTV局に対する決定は読んでいないが、おそらくコピペだろうと勝手に想像..

*2:「1対多」の送受信を行う機能はない。

*3:被抗告人がこの設定を任意に変更することはない。システムがレンタルでない点は重要かも。

*4:被抗告人は選択に関与しない。

*5:別に海外でなくてもよい。「日本の番組が観られない」ということを強調したかっただけ。札幌‐東京間でもよい。また、(言うまでも無いが、)単身赴任者は「お母さん」でもよい。(フェミニズム団体から抗議されたら困るので念のため付記しておこう..w)

*6:ここでいう「正確」とは、「本件は私的複製とは(直接的には、)無関係な事案」という意味。

*7:「太平洋を跨ぐケーブル」が技術的に(あるいは法的に)可能なのかどうかは知らないけど。途中で増幅が必須だと思うし..

*8:民訴・民執・民保なんかは忘れちゃったけど、仮処分は本案とは違って、簡易な証拠調べ(疎明?)でOKだったはず。

*9:バラエティー生活笑百科』の著作権者としての地位を主張している。ちなみに該番組は「法律相談バラエティ」…(笑)

*10:もっとも、「著作権」の方でも公衆送信権で攻めているようなので、逆転は無理っぽいけど。でも、まぁ本案でも負けたら、「S○NYを訴える」とか「法改正のロビー活動」とか色々やってみるといいと思う…(?!)