「稽古不足を幕は待たない」のだなぁと…。

昨日・一昨日と2日にわたって『企業法務戦士の雑感』様(FJneo1994様)からTBを頂きました。

「キタ ━━(゚∀゚)━━ ッ!!」(あるいは「神降臨!」w)といった気持ちでドキドキしつつ拝読しておりました。僕は事案から離れてすぐに話が飛躍したり、肥大化したり、あるいは視野狭窄や近視眼に陥ってしまうクセがあります(←のめり込めばのめり込む程..)。FJneo1994様の評釈を拝読しながら「現場に帰って来い!」「事件は抽象論で起きてるんじゃない!具体論で起きてるんだ!(©青島刑事?)」といった感じで、ヒャッと冷水を浴びた心境になりました。「現場百遍」のマインドは刑事ドラマだけじゃないんだなぁと反省した次第です。FJneo1994様のおかげで顔がグイっと事件に戻った感じです。
「TBも頂いたし、何かコメントしないと…」とか「評釈を完成させることで“何か”お返しができれば…」とは思っているのですが、もとよりそんな能力はありません(←僕の知的財産法は「ヘタの横好き」を脱しないまま、あと数ヶ月で終了(修了)を迎えることになりそうです)。でも反面、「時間があれば能力がアップし、評釈も『完璧』になる!」というのはフィクションだろう…という考えが(諦念とは違った意味で)僕にはあります。「細工は流々、仕上げを御覧じろ」なんて、実は費やした時間とは全く無関係な幻想でしかなくて、結局、「稽古不足を 幕は待たない〜♪恋はいつでも初舞台〜♪小椋佳『夢芝居』)」といった感じで、いきなり「ハイ、本番でーす!」となってしまうんですね。恋愛なら色あせないドキドキ感があって良いとしても、研究会報告や会社の仕事なんかも「まだ準備が整ってないのに・・」という思いと伴に(見切り発車とは言わないまでも)、オペレーションがあれよあれよとキックオフしてしまうなぁと。でも「報告はまだ早いです。考えがまとまるまでもうちょっと待って下さい」と言った所で、「じゃあいつまとまるんですか?」と訊かれても、その問い自体がナンセンスでして、そういうことなら「今が全てなんだ」と開き直るしかないと。『場数(ばかず)は馬鹿の複数形(馬鹿s)』だと思っていますが、その時々の「馬鹿」を重ねた方が、むしろ成長するんだろうなぁと。
・・・なんだか何が書きたかったのか、段々分からなくなってきましたが、先週くらいから評釈に取り掛かり、「全然間に合わない..」と思う度に、でもどこまでやれば完成なのかも曖昧で、五里霧中な手探り状態の中、FJneo1994様のエントリが大きなアドバイスとなり、とっても心強く感じました。以下は「ペンキ塗りたて」どころか「ペンキ」にさえなっていない駄文なんですが、「ブログだしね…」という言い訳に甘えつつ、恥を承知で途中経過をツラツラと箇条書きで書いてみます。
 

  • まず、「公序良俗で(それも国際信義で)切るとは、デカイ刃物を持ち出しましたなぁ〜!」というのは同感です(僕も『赤毛のアン』なんてタイトルしか知りませんし..w)。カナダで「国民的文芸作品」なのかどうかは知りませんが、少なくとも我が国では『ハイジ』とか『フランダースの犬』と同列の「まぁまぁ有名な書籍・アニメ」といった程度だと思うので、そこに7号を持ち出されると(第一印象として)「んっ?」という違和感が残ります。ただ、逆に「7号を持ち出さざるを得なかったのはナゼか?」と疑問が進み、「著作権の保護が及ばない」という点がポイントなんじゃないかと(昨日あたりから)思い始めていました。
  • 「19号で保護を図る」というのがこの手の事件の場合、真っ先に思いつくスジです(←いや、これは院生レベルの発想であって、実務では7号がこそが「真っ先に思いつくスジ」なのかも知れませんが…)。その場合、「不正の目的」要件は「許諾の有無」に掛かってくる気がします。しかし翻って、「著作権が満了し、パブリックドメイン(=以下PD)になったものに対して、どうして相続人(やその関係団体)の許諾がいるのか?」と。許諾をなしうる根拠というか権原がよく分からないのです。加えて題号ということですと「それは元々、著作権の保護は及ばないでしょうよ?!」と。「不正の目的」を出願時で判断するのだとして(4Ⅲ)、本件商標は平成12(2000)年出願ですから、その時点で著作権は切れています(1992年満了)。「PDのコンテンツで『不正の目的』は認定しづらいよね」というのは判旨(pdfファイル)の32頁の最終行あたりからもふわっと匂ってくる気がします。
  • 15号については、僕の中では考えていないスジでした。何というか本件の場合、当事者が「商品化事業の主体」というよりは、州政府、あるいは半官半民の機関という「(商業的に)ピュアな存在」(←…なのかどうかも実は怪しいですが..)でしたので、どうもビジネスライクには扱えないという気分が前提にあります。また、広義の混同を考えた場合、せいぜいライセンス関係の混同レベルしか感じられず、「それで行けるのかなぁ?」という不安が残ります。加えて、先ほど客員教授からコメントのメールを頂いたのですが、外国企業の場合、15号の証拠をそろえるのは大変だそうで、「それなら7号で…」という感じらしいです。ともあれ、15号はちょっと考えから外していたラインなので、今一度検討してみます。…あ、「ピュアな存在」に関連して(これは余談ですが)本件で『国際信義』といった場合、「一国の州政府が出てきちゃったら、そりゃあー無視できませんわなぁ〜。顔に泥を塗ったら『国際信義』に反しますよねぇ〜」とか思ってんじゃねぇ〜の!?と心の中で悪態をついています(笑)。僕、もうちょっと謙虚にならないとなぁ…。
  • 「19号で保護できない」そして「15号でも難しそうだ」と考えた場合、裁判所としては7号の「宝刀」を抜くしか残されておらず、そしてPDの保護を謳うなら商標そのものの価値(本件では文化遺産的価値)を高らかに宣言するしかカードが残されていないんだろう、という印象です。もっとも、この場合、前提として「保護すべきだ!」という価値判断があるわけでして、この前提を覆せば結果は変わりえます。この点、本学のSg教授(民法)が「本件は、明示的に知財法で規律されていない模倣行為を不法行為とする塚原コートの発想がよく現れている」とおっしゃっているらしく(←指導教授からメールのCCで転送を頂きました)、「なにかしら保護したい!」というマインドから7号を捻り出して適用したという理解が出来そうです。
  • 逆に「そんな保護は不要だ!」と考えた場合、(「切れるカードがない」という消極的な理由で)サリヴァン社の商標登録を認める訳ですが、その場合でもAGGLA本体が出す商品や、そこから(嫌々ながら)ライセンスを得た他のライセンシーの出す商品にサリヴァン社が権利行使をするのを「権利濫用」で叩くことは認めていい気がします。もし、商業道徳を持ち出すのであれば、登録サイドではなく、権利行使サイドで、権利濫用を認定するのが従来の裁判例とのバランスからも「おさまりがいい」という印象を持っています。

(ここからは半分余談…)

  • 赤毛のアン』が叩かれるなら、他にも各国で似たような扱いを受けうる作品は何本かありそうです(フランスの『星の王子さま(Le Petit Prince)』とか)。今回の判決が呼び水になって、無効審判合戦が起こるのでしょうか…?少なくともフランス政府(大使館?)が乗り込んできたら、無効にしちゃいかねないよねぇ〜と。
  • Kranzle商標事件(知財高判平成18年1月26日)については南かおり先生の評釈があります(Lexis判例速報8号146頁(2006年))。…っていうか、南評釈がでてると知ったのは、他ならぬ『企業法務戦士の雑感』様のエントリ(※こちらの「註13」)だったんですけど…(笑)。
  • 赤毛のアン』に類似の事件(というかトラブル)として思い出されるのが『二十四の瞳』です。以下、(著作権侵害を承知で?)記事を転載します。

●香川・小豆島出身の作家、壼井栄の小説で、映画化もされた「二十四の瞳」を同島の化粧品製造販売会社が商標登録したことが、14日分かった。地元の商工会や観光関係者は「『二十四の瞳』は島民の共有財産」として反発しており、近く特許庁に登録の無効審判を請求する。登録した「小豆島ヘルシーランド」によると、「二十四の瞳」は奈良県内の男性が商標登録していたが、更新手続きがされておらず、同社が昨年3月、化粧品など8分野、200品目近くについて特許庁に出願。今年3月25日に認められていた。(2005/05/15)
●(続報:)「二十四の瞳」の商標登録問題が11日、一件落着した。商標登録を取得していた化粧品製造会社「小豆島ヘルシーランド」(柳生好彦社長)に対し、無効審判請求していた財団法人「岬の分教場保存会」(理事長、坂下一朗・内海町長)が和解、坂下理事長と柳生社長が握手した。小豆島の観光業者は「島のイメージダウンにもなりかねないと思っていた。和解で一安心」と歓迎している。この日の会見で、坂下理事長は「互いに島の観光発展に取り組む姿勢を確認した」と友好な和解を強調した。また、8月2日にテレビドラマ「二十四の瞳」が放映されるため、「放送前に解決してよかった」(柳生社長)と笑顔がこぼれた。また、坂下理事長は「財団で二十四の瞳ブランドを独り占めするつもりはない。小豆島は一つ。3年後には、島にオリーブが導入されて100年になる。この記念事業と組み合わせるなど、島のブランド活性化につながるように利用したい」と話した。土庄町で旅館を経営する川向武さん(62)は「『二十四の瞳』は島民全員で守ってきたもの。島全体の財産なので、広く利用できるようになるだろうから喜んでいる」と話した。(2005/07/12:毎日新聞

「観光産業」の主張や「岬の分教場保存会」という団体(←AGGLAっぽい?)などが興味深いなぁと思いました。…ちなみに『二十四の瞳』も僕は読んだことがありません。
(以上)
 
今回は本当にありがとうございました。更に精進(消尽?)致します!
(カラ回りしないことを祈りつつ..)