特許法104条の3
(たまには知財ネタ… *1)
id:unknown-man様のブログ(=『ある企業内弁理士の日常』)を拝読。郄部判事の特許法104条の3についての見解が紹介されている(※こちら)。「除斥期間の経過により無効審判を提起できない場合でも、特許法104条の3(商標法39条における準用)の適用は可能と考える(権利の安定性よりも法律制定の趣旨が優先される)」とのことだが、この点につき、同判事は次のようにおっしゃっている*2(僕の責任の下でまとめると以下)。
- 商標法39条は特許法104条の3を準用している。しかし、商標法には特許法には無い「除斥期間」の制度がある(商標法47条)。除斥期間経過後に無効理由を主張できるだろうか?
- 商標法47条の除斥期間を「権利の有効性を争い得る時的限界を定めたもの」と解し、期間経過後は「無効理由が治癒された」として、もはや無効は主張し得ないという考えもあろう。
- しかし、商標法47条は「審判が請求できない」としており、商標法39条は侵害について特許法104条の3を準用しているし、無効審判手続と侵害訴訟手続は別ルートであって、その判断が異なる事態もありうる、という考え方に立てば、侵害訴訟において特許法104条の3の抗弁を主張し得ることになる。
- また、除斥期間経過後であっても、判例理論における無効理由が明らかであること*3を理由に、権利濫用の抗弁を主張することができるとも解される。
- 従って、例えば商標法4条1項10号違反の場合も、「不正競争の目的」の有無にかかわらず、同号違反か否かを判断し、不正の目的が無い場合でも、本来登録されるべきではなかった商標権に基づく請求は許されないと解する(東地判平17・10・11最高裁HP[ジェロヴィタール])。
なお、unknown-man様のエントリ中、「104条の3(権利行使の制限)が制定されたので、従来のいわゆる『権利濫用の抗弁』を用いる必要性はない」という記述があるが、これは「権利濫用を主張する時は必ず104条の3でやれ!」という意味ではないだろう。権利濫用は無効事由に基づくものに限られないと思うので。