日々

  • 8:30、起床。新聞2題。①:ほっかほっか紛争(※こちら)。こういう「内紛」型の事案は権利濫用に乗りやすいと思う*1。②:紅白の曲目(※こちら)。聞きたい曲が1曲もない。見事なまでに「1曲も」ない!(苦笑..)
  • 出勤。ゼミの予習など。「アイコン・ヘルプ機能特許」はかなりくだらないと思われる。いわゆる「ワープロ特許」の類か?地裁もイヤイヤ不本意ながら侵害を肯定したのかもしれない*2
  • 16:30、院ゼミ。同期と「ほっかほっか紛争」についてダベったり。
    • 前半は講義。方法特許の消尽について。かなり難しい。明日の日記にまとめてアップしようと思う。(※12/21付記:「方法特許の消尽」についてはこちら)
    • 後半は判例報告。今日の判決は[一太郎・大合議]*3。事案自体は松下の特許に無効理由が見つかったので、104条の3によりジャストシステムの逆転勝ち。「方法特許の間接侵害」についての判示が特徴的とのこと。「判決文(該当箇所)」と「参考図*4」は以下。

― 方法特許の間接侵害 ―

〔判決文〕
「・・・『控訴人製品をインストールしたパソコン』について、利用者(ユーザー)が『一太郎』又は『花子』を起動して、…(クレーム記載の状態を)…作出した場合には、方法の発明である本件第3発明の構成要件を充足するものである。そうすると、『控訴人製品をインストールしたパソコン』は、そのような方法による使用以外にも用途を有するものではあっても、同号(←註:101条4号(現5号)のこと)にいう『その方法の使用に用いる物であってその発明による課題の解決に不可欠なもの』に該当するものというべきであるから、当該パソコンについて生産、譲渡等又は譲渡等の申出をする行為は同号所定の間接侵害に該当し得るものというべきである。」
「しかしながら、同号は、その物自体を利用して特許発明に係る方法を実施することが可能である物についてこれを生産、譲渡等する行為を特許権侵害とみなすものであって、そのような物の生産に用いられる物を製造、譲渡等する行為を特許権侵害とみなしているものではない。本件において、控訴人の行っている行為は、当該パソコンの生産、譲渡等又は譲渡等の申出ではなく、当該パソコンの生産に用いられる控訴人製品についての製造、譲渡等又は譲渡等の申出にすぎないから、控訴人の前記行為が同号所定の間接侵害に該当するということはできない。」
 
〔参考図 (※クリックで元の大きさになります)〕

    • まず前提として、当時はプログラムそのもので特許を取ることが(実務上は)できなかった。図でいうと「一太郎のディスク(=プログラム)」で特許は取れない。従ってクレームは、「インストールされたパソコン(=物クレーム)」で書くか、「(インストールしたパソコンを用いた)表示方法(=方法クレーム)」で書く必要があった。
    • 物クレームの場合(=図の上半分)、「インストールされたパソコン」が侵害品に当たり、「一太郎のディスク」は間接侵害となる(101条2号)。これはよい。
    • 問題は方法クレーム(=図の下半分)。クレームが「表示方法」なので表示を実行すれば侵害に当たり、「インストールされたパソコン」は間接侵害に当たる(判決の前段がこの旨判示している。101条4号(現5号))。しかし判決はそれに続く部分で、「インストールされたパソコン」を生産する物(=要は「一太郎のディスク」)は、方法特許の場合、間接侵害に当たらないとしている。つまり「一太郎のディスク」は非侵害となる。方法特許の場合、「間接の間接は非侵害!」ということになる。
    • この判示がエラく評判が悪いらしい。①:この判示だとCD−ROMだけで販売すれば(あるいはパソコンにCD−ROMを付属すれば)セーフで、パソコンにプレインストールすればアウトとなる。この帰結はオカシイだろう。②:知財高裁は「現在はプログラムそのもので特許が取れるから保護に欠けることはない」と判示している。しかし、間接侵害の対象物は特許権を得られるようなものである必要はないはず。③:物クレームと方法クレームの差異は相対的であるから*5、2号と4号(現2号と5号)で判断が分かれるのは不当。
    • 従って、「一太郎のディスク」は「間接の間接」ではあるものの、他に用途のない、専用品であるのだから、物クレームと同様に、方法クレームにおいても「侵害」とすべきだったのでは?!、と*6
  • 19:30、終了。特に用事もないので、そそくさと帰宅。
  • 死亡記事3題。青島幸男さん(ガン・74歳・こちら)、岸田今日子さん(脳腫瘍・76歳・こちら)、カンニング・中島さん(白血病・35歳・こちら)。ご冥福をお祈り申し上げます..
  • ブログも書かずに就寝..

*1:商標権の権利濫用が認められた「内紛」型の最近の事案として、大阪高判平16・9・29(平15(ネ)3283号)[極真空手]など。

*2:余談だが(..っていうか前にも書いたが、)地裁の判事が「郄部・瀬戸・熊代」となっている。雛壇に女性が3人並んだのかな??

*3:知財高判平17・9・30(※こちら)。ちなみに来週の研究会でも教授がこの判決を扱う。

*4:図中のアイコンはモロに著作権侵害なのですけどね..

*5:両者の区別は「ドグマ」に過ぎない。

*6:判決を善解すれば、「多機能型間接侵害の成立範囲を制限しようとしただけなんですよ。若干ミスリーディングがありましたねぇ」ということなのかもしれない。