商標の「消尽」とは…??

・・・たまにふと思い出したように知財のネタでも書いてみようかと。
先ごろ公表された『電子商取引及び情報財取引等に関する準則』(経産省)をパラパラとめくってみました。紙がもったいないので「4アップ・両面・知財部分だけ」というかなり省エネな読み方ですけどね*1
で、とりあえず気になったのがⅡ-2-4「インターネット上への商品情報の提示と商標権侵害」の項目*2。論点として「ネットオークションにブランド品を出品することやインターネット上の掲示板でブランド品の販売の申出を行うことは商標権の侵害にあたるか。」というもの。回答として(1)「業として」、かつ(2)「真正商品でない」場合は商標権侵害の責任を負う、となっている。
疑問を感じたのは(かなりオタク的というか枝葉末節ではありますが、)(2)の説明文の内容。回答は(2)について「真正商品であれば、その適法な販売において商標権は消尽しているものと考えられ、その商品の転売には商標権は及ばない」とのこと。うーん、これって「商標の消尽」なのか??単に「出所識別機能が害されない」ってだけの話ではないの?
準則は裁判例として大阪地判昭45・2・27判時625-75[PARKER]に言及している。[PARKER]は未見ですが、判決中で「消尽」と言った判決だっただろうか?教科書*3では、取引者(例:デパート、文具店。ネットオークションなら出品者かな?)ではなく、商標権者(例:パーカー社)を識別するから、出所の混同は起きず、商標権侵害とはならない、という説明になっていて、「消尽」には一切触れられていない(というか教科書中、「商標の消尽」で説明している箇所が(見た限りでは)ない模様)。
商標は信用の保護(出所識別の保護)が念頭に置かれた標識法なので、転々流通で二重利得がどうとかこうとかいう議論ではなく、どこまで流通しようとも、要は商標権者が自らの商品に付した商標が、権利者自身を示す限りはセーフなんだろ?という印象。あとはその流通の過程での変質(例:開封で商品の中身が変質するとか)が問題となるのみでしょう。「消尽」で説明するのはどうもゴロゴロするというか、スッキリしないなぁというのが準則の該当部分の説明を一読したときの感想です*4。あるいは単に「コトバの問題」か「説明の都合」に過ぎないだけかもしれませんケド..

*1:そのうち全部読む必要があるんだろうなぁ…。

*2:「準則」185頁以下。

*3:田村善之『商標法概説〔2版〕』(2000年・弘文堂)158頁。

*4:一昨年に教授からそういう説明をどこかで聞いた気もするのですが、よく覚えていない。資料はダンボールに詰めちゃったし…。