衆議院の解散

(たまには時事ネタ..)郵政民営化法案。首相は「参議院で否決されれば衆議院解散も辞さない!」と主張。ま、気合の入り具合はさておき、憲法上の疑義があるという声がチラホラ出ています。で、曲がりなりにも4年間で200万円分ぐらい法律を勉強した(はずの)身としては、やっぱり多少は気になったりする訳ですよ。「どうだったっけなぁ〜?確か69条と7条の問題だった気が…」とか思いながら懐しの教科書、野中=中村=高橋=高見『憲法Ⅱ(第3版)』を読み返してみました。

結論から言うと一応、解散はできます。大雑把に説明するとこんな感じです。

:まず憲法には「誰に解散の決定権があるか?」とか「どういう場合に解散できるか?」についての規定がありません。:で、学者がなんて言っているかというと、大きく2つの考え(=学説)があります。つまり、(鄯)「解散は天皇の国事行為(7条3号)となっていて、国事行為には内閣の助言・承認が必要だ。だから、解散の実質的決定権は内閣にあって、しかも7条3号は解散について制限をつけていないから、内閣は自由にいつでも解散を決定できるのだ」という説。(鄱)「内閣に解散の実質的決定権があるのは認めよう。しかし、その根拠を助言・承認に求めるのはおかしい。根拠は69条に求めるべきだ。すなわち、解散は内閣不信任決議に対する“対抗措置”なのであって、やられたらやり返すという図式の中でのみ内閣は解散権を行使しうるのだ」という説。(鄯)に立てばいつでも解散でき、(鄱)に立てば内閣不信任決議案が可決したときのみ解散できる、ということになります。:実は一応、判例があるんですが、最高裁は「統治行為論」(←この理論の説明はいずれ..)を援用して判断を避けています(最大判昭35・6・8民集14-7-120[苫米地事件])。:実際には7条解散が慣行になってしまったので「ま、いっかぁ…」という感じで現在に至り、(鄯)の説の方が「まぁ無難な考えだ」ということになっています。

…なんかエラソーに書きましたけど、学部時の憲法Ⅱ(統治)の単位は「良」だったりします..たま〜に他法を復習すると結構面白かったりします。ちなみに、法学部の期末試験では上記の順序、すなわち「問題点の指摘(前提)→学説→判例私見他」で答案を書いていくのが一般的です。で、答案はボールペンで書くことが義務付けられます。最初は戸惑いますが、そのうち慣れます。