プロダクト・バイ・プロセス クレイム

(以下、備忘メモ…)

(1):P by Pとは? P by Pとは製造方法(=プロセス)で物(=プロダクト)を特定するクレイムのこと。バイオの分野などでは出来上がった物を具体的な構造等で表現できない場合があって(←どういう場合なのか文系人間の僕にはイマイチ分からんが…)、その場合、製造方法で物を特定することとなる。クレイムの例としては「 製造方法A(工程a→b→c)により生産される抗生物質X 」など。

(2):審査段階 クレイム対象はあくまで「抗生物質X」(=物)なので、この「X」の特許要件(=新規性とか)が問題となる。製造方法Aがいかに斬新であっても、「X」が特許要件を満たさないのなら(=例えばXが公知の場合とか)、拒絶されることとなる。

(3):権利範囲 権利付与後の技術的範囲(=権利範囲)を考える段にあっては、「プロダクト重視派」と「プロセス重視派」に分かれる。「被疑侵害者がXを製造したのであれば、製造方法が相違していてもアウト(プロダクト重視派)」と「被疑侵害者の製造方法がクレイムに記載された方法と同一である場合に限りアウト(プロセス重視派)」の2派。ここがP by Pの論点。

…まぁ、だいたいこんな感じかな?
「プロダクト重視派」「プロセス重視派」の用語は僕がテキトーにそう呼んだだけ(弁理士の南条先生は前者を「同一性説」、後者を「限定説」と呼んでいるが僕には覚えづらい。プロセスとプロダクトのどちらを指して「同一」「限定」と言っていたのか忘れちゃうから…)。判例は概ね「プロダクト重視派」。でも[止め具]は「プロセス重視派」っぽい(もともとP by Pで書く必然性に欠けるから)。結構おもしろい分野だと思う。 (わくわく?!)


(※南条雅裕「プロダクト・バイ・プロセス・クレームの権利解釈」パテント55巻5号23頁(2002年) )

《補足》
hamtaro氏の場合は実際のクレイムをお見せした方が話が早いんでしょうね。下がP by Pクレイムの例(出願人は三菱ガス化学)。


ジクロロメタンを溶媒としてビスフェノールとホスゲンとの反応によって得られ,低ダスト化されたポリカーボネート樹脂溶液に,ポリカーボネート樹脂の非或いは貧溶媒として,n−ヘプタン,シクロヘキサン,ベンゼン又はトルエンを沈殿が生じない程度の量を加え,得られた均一溶液を45〜100℃に保った攪拌下の水中に滴下或いは噴霧してゲル化し,溶媒を留去して多孔質の粉粒体とした後,水を分離し,乾燥し,押出して得られるポリカーボネート樹脂成形材料であって,該ポリカーボネート樹脂中に含有される重合溶媒であるジクロロメタンが1ppm以下である光ディスク用ポリカーボネート成形材料」


このクレイム、最初に製法がずーーっと書いてあるので「あら、製法特許かしら?」とは思うものの、クレイムの最後が「…ポリカーボネート成形材料」で終わっているので物の発明。製法はあくまで物を特定するために書かれているに過ぎないということ。